書籍情報

ウェディング・ドール【特別版イラスト入り】

ウェディング・ドール【特別版イラスト入り】

著者:春原いずみ

イラスト:有馬かつみ

発売年月日:2015年05月29日

定価:918円(本体850円+税)

三嶋佳奈(みしまかな)は引っ込み思案で自分に自信がなく、顔を上げることも苦手だった。そんな佳奈に声をかけたのはカリスマウェディングプランナー・神野眞守(まもる)。なんと神野は佳奈に、ウェディングドレスを着る専属モデルになってほしいと持ちかける!! 「君は理想のモデルだ。だから君には完璧なレディになってもらわなければ」そんな神野の言葉とともに厳しいレッスンが開始されて…!?

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登場人物

◆三嶋佳奈(ミシマ カナ)

自分に自信がなく、人の顔を見て話せない。趣味は、祖母から貰ったアンティークドールにドレスを作って着せること。
◆神野眞守(コウノ マモル)

どんな希望でも叶える凄腕のウェディングプランナー。自信家で傲慢に見えるが、芯の部分は優しい。

立ち読み

パタリとドアが閉じる音に、佳奈の肩が少し震えた。
「クーラーは切ってある。暑くないか?」
「……ええ」
神野の問いに、佳奈は頷いた。
「パーティではろくに食べなかっただろう? 何か頼むか?」
「いいえ……あまりお腹は空いていないの」
佳奈をソファに座らせると、神野はカウンターにあるミニバーからウイスキーの小瓶を選び出した。グラスに少し入れて、ポットのお湯を差す。
「ありがとうございます……」
ホットウイスキーは初めてだ。ふわっとアルコールの香りの立つ湯気が温かい。少し口に含むと喉の辺りまでぬくもりが届いた。
「おいしい……」
「それがおいしいということは、佳奈は相当冷え切っていたんだな」
神野はため息交じりに言うと、バスルームから持ってきたバスタオルで佳奈の肩を包んだ。
「佳奈」
神野は佳奈の横に立ち、髪をまとめていたピンをすっと抜いた。しっとりした髪が肩先にこぼれ落ちる。
「……七瀬が謝っていた」
佳奈の肩が揺れた。グラスを握りしめてうつむく。
「……あれと君は住んでいる世界が違うんだ。あれの価値観と君の価値観は違う。それを……彼はわかっていなかった」
「七瀬さんの住んでいる世界に……神野さんも住んでいるんですか?」
神野は少し笑って、軽く首を振った。神野の微笑みが佳奈は好きだと思った。あまり笑う人間ではないだけに、その微笑みの意外な優しさは佳奈の心を強く揺さぶるようだった。
「どうかな。知ってはいるが……住んではいない気がする」
「私は……おかしいですか?」
ウイスキーを一口飲んで、佳奈は少しむせた。
「逃げ出したりして……おかしいですか?」
神野はまた首を振った。ラベンダーがふわっと香る。
「いや、当たり前だろう。誰でも……あれは驚くさ」
髪を撫でられる感触が好きだと思った。ひたひたと胸の中に温かい波が寄せてくる。佳奈はそっと神野の手に頭を寄せた。少しためらってから、彼の手が優しく引き寄せてくれる。
「佳奈のファーストダンスを台無しにしてしまった……僕からも謝るよ」
何の音もしない。静かな静かな時間。
「どうして……ダンスのパートナーを替わってしまったんですか?」
佳奈を七瀬に任せたのは神野だ。彼は言った。『もう……無理だ』と。
「君は……僕より七瀬が……好きなのだと思った」
「神野さん……」
「君は七瀬に笑う。七瀬に笑顔を見せる。でも……僕には見せてくれない」
「そんなこと……っ」
佳奈はいつも神野の前では緊張していた。彼に触れられるとどきどきして、今にも倒れてしまいそうになった。だから……。
「私……私……っ」
佳奈はグラスの中身を一気に飲んだ。こほこほっと大きくむせる。
「佳奈……っ」
神野がカーペットに膝をつき、佳奈の背中を両手で抱いた。佳奈は苦しそうにむせる。神野は震える佳奈の身体を優しく抱きしめた。
「佳奈……大丈夫か……?」
ラベンダーの香りに包まれて、佳奈は幾度も大きく息をついた。この香りはやはり好きだと思った。この香りに包まれると、不思議に幸せな気持ちになる。感じたことのない温かな気持ちに満たされる。
「佳奈……」
髪を撫でられた。そっと胸にすがりつくと、彼は包み込むように抱きしめてくれた。その腕の力が少しずつ少しずつ強くなっていく。
「佳奈……部屋に……戻った方がいい」
佳奈は首を横に振った。
「佳奈」
それでも、彼の腕は弛まなかった。佳奈を抱きしめ、髪にそっと唇を埋める。
「僕が……僕を止められるうちに、ここから……出て行ってくれ」
彼の声はいつものように通りのよいものではなかった。少し苦しそうで、少しかすれていた。佳奈はゆっくりと首を横に振った。
「佳奈……僕の……佳奈」
彼が少し身体を離した。両手で佳奈の頬を包んで、瞳を合わせる。彼の栗色の瞳に佳奈が映っている。白い頬を桜色に染めた佳奈が映っている。
「君は……最初から……僕のものだ」
見つめ合ったまま、二人の唇が近づく。彼の吐息が唇に触れる瞬間に、佳奈は目を閉じていた。それでも、彼の栗色の瞳に自分が映っていることはわかった。
「……っ」
彼の唇は温かかった。いつもひんやりと冷たい指をしている人なのに、唇とそのキスは温かかった。唇を重ねたまま、彼が佳奈の腕をそっと掴んだ。佳奈をソファから立たせ、腕の中に包み込む。
「佳奈……」
優しい触れあうだけのキスを解いて、額を合わせる。
「ひとつ聞いていいか」
「ええ……」
彼の腕の中で、佳奈は頷く。さっきの七瀬とのキスとは、全然違う。胸が破れそうなほどどきどきして、くらくらするくらい甘い。
「……君を全部……僕のものにしたい」
その言葉の意味するところがわからないほど、佳奈は子供ではなかった。
「……はい……」
ふわりと抱き上げられ、彼の胸に顔を埋めて、佳奈はそっと頷いていた。
ベッドに抱き下ろされると、柔らかいスプリングがふっと沈んだ。
「ドレス……脱いだ方がいい」
「だめに……しちゃった」
背中のファスナーは滑らかに下ろされた。シルクとオーガンジーのドレスは、すっかり雨を吸って、くったりしている。神野は器用にドレスをさばいて、ストンとベッドから落とした。ウエストをきゅっと絞める下着はかなりきつくできているはずなのに、彼は簡単にホックを外し、佳奈の身体を解き放っていく。
「慣れて……いるのね」
春日部に手伝ってもらわなければ着られなかったドレスなのに、彼はあっけないほど簡単に、佳奈の素肌を暴いていく。
「……いや?」
彼が低く言った。首を振る。
「恥ずかしいって……思わなくてすむわ」
滑らかなシーツに身体を埋める。ひんやり冷たいシーツが火照った肌に気持ちいい。
「恥ずかしいことなんてない」
枕に顔を埋める佳奈に、彼はくすりと、佳奈の好きな微笑みを見せた。
「佳奈が恥ずかしいなら……それは僕も同じだ」
そっと顔を近づけて、キスを交わす。唇を触れあわせるだけの優しいキス。佳奈が溶けるまで、彼は待ってくれているようだった。髪を撫で、頬を撫でて、優しいキスを繰り返す。
「佳奈……」
「……痛いわ」
佳奈は彼が羽織ったままのシャツに触れた。
「え……?」
「シャツが……痛い」
「あ、ああ……」
抱き寄せられると柔らかく揺れる胸に彼のシャツが擦れる。ピンク色の可愛らしい蕾(つぼみ)のような乳首はびっくりするくらい感じやすくて、シャツが擦れただけで痛みを感じる。
「ごめん」
彼のシャツがベッドの下に落ちた。同時に、彼の身体の下に佳奈は巻き込まれた。
「あ……っ」
甘すぎるキスは突然だった。
「……っ」
素肌が触れあった瞬間に、何かが弾けたようだった。彼の唇が佳奈の唇に重なる。熱い舌が唇をノックする。拒むことを考える前に舌が絡み合っていた。指先を絡め合い、素肌を抱き寄せ合って、深く唇を合わせる。
「ん……ん……っ」
幾度も角度を変えて、お互いの唇をすべて味わい合う。吐息を奪い、声を奪って、唇同士で愛し合う。
「佳奈……」
彼のしっかりとした大人の男の手が、佳奈のまだ固い乳房を包み込む。
「あ……っ」
感じやすい乳首の先を指に挟んで刺激しないようにして、彼はゆっくりとそこを揉みしだく。
「だめ……っ」
「可愛いよ……佳奈……」
首筋から喉元に唇が降りてくる。すべてのキスが痛いくらいに甘い。
「待って……っ」
「だめだよ……待てない」
彼の声がかすれている。どきりとするくらいの色香を含んだ声に、身体の奥が熱くなってくる。
「あ……ああ……ん……っ」
恥ずかしい声が漏れる。飲み込もうとしても、彼の指にあおられて、声が抑えられない。
「待って……待っ……て……っ」
「可愛い……可愛いよ……」
「い、いや……あ……い……や……っ」
彼の指が熱い。乳房を揉みしだき、細くくびれたウエストからふっくらとしたお尻まで幾度も撫で下ろし、撫で上げる指が熱い。いつも冷たい指をしていたはずなのに、どうして今はこんなに熱いんだろう。
「……愛してるよ……」
シーツから抱き上げられる。腕の中にすっぽり包まれて、肌が熱く燃え上がる。
「あ……はぁ……あ……ん……」
彼の背中に腕を回し、強くしがみつく。この身体を燃え上がらせ、揺さぶり尽くす男の背中に腕を回し、すがるように抱きしめる。
「……身体の力を抜いて……」
彼が囁(ささや)く。
「そのまま……溶けるんだ……」
「あ……あ……ん……っ」
胸元にちくりと熱い痛み。彼の唇が残す薄赤い花びら。髪を顔からはらうように撫でて、彼が瞳をのぞき込んでくる。
「……佳奈……僕の……佳奈……」
潤んだ佳奈の葡萄色の瞳が彼を見上げる。いつものクールさをかなぐり捨てた、生身の男の顔。大人の男の滴(したた)るような色香が、佳奈の身体をあおり立てる。初めてなのに、もてあますくらいに身体が熱い。
「……好き……」
彼の頬に手を触れて、佳奈は囁く。
「あなたが……好き……」
「佳奈」
息が乱れる。素肌を柔らかく撫でる彼の指先に吐息がこぼれる。
「佳奈……」
「……嫌いに……ならないで……」
彼の手が優しく太股の内側を撫で上げる。柔らかい肌を楽しむように優しく、ゆっくりと撫で上げてくる。
「どうして……」
「だって……だって……っ……あ……ああ……ん……っ」
高い声が漏れて、身体がびくりとのけぞる。
「こんなに……なっちゃって……あ……っ」
恥ずかしくて仕方ないのに。身体が不規則に揺れ、あられもない声が溢れて、恥ずかしくて仕方ないのに。でも、身体の震えは止められず、彼の指にも逆らえない。
「いいよ、佳奈……いい子だ……」
「あ……待って……待……って……っ」
「佳奈……っ」
「ああ……ん……っ!」
上にずり上がりそうになる身体を彼が優しく、でも容赦のない力で押さえてくる。
「ああ……っ!」

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