書籍情報

お・と・なの絵本 【書下ろし】

お・と・なの絵本 【書下ろし】

著者:森本あき

イラスト:三栗チコ

発売年月日:2014年12月05日

定価:990円(税込)

俺が好きだって認めろよ ホント、意地っ張りで、かわいいやつだ 笑顔がかわいい大学生の吉住七斗。電車で気分が悪くなったところを人気児童文学作家の大葉龍和に助けられた。全体的な雰囲気は柔らかいのに実は人間嫌いの龍和だが、素直な七斗は気に入られ、いい友達関係が続いていた。ある日七斗は龍和に、初めて書いたBL小説の感想を聞かせてくれと原稿を読まされる。作品の資料にしたいと七斗を裸エプロン姿にして写真を撮り始めた龍和。こ、こんなの恥ずかし過ぎるよ~!

この本を買った人はこんな本も買ってます!

お取扱店

登場人物

吉住七斗(よしずみ ななと)
目がくりくりして笑顔がかわいい大学生。人の悪意にあまり気がつかない、素直で律儀な性格。箸の使い方など、食べる姿が綺麗。電車で気分が悪くなったところを偶然龍和に助けられた。
大葉龍和 (おおば たつよし)
30代前半。清潔感溢れる黒髪。少し垂れた目は大きくて二重。全体的な雰囲気は柔らかいのに、人間不信なところがある。一度懐に入った人間に対しては甘々。児童文学作家。ドラゴシリーズが人気。

立ち読み

「女に裸エプロンをさせたことすらない俺としては、どういうふうになるのか、その構造を知りたいんだよ。だから、もっとゆるめろ」
「で、でも…」
「それとも、あれか、おまえの乳首は人に見せたくないような変な形状してんのか。男の乳首なんて、ただの飾りだろ。泳ぎに行ったり、温泉に行ったりしたときに隠すのか?隠さねえだろ。だったら、もったいぶってないで、さっさと見せろ」
そう言われてみれば、そうだ。女の子の乳首とはちがう。龍和だって、別に七斗の乳首に興味はない。
ただ、どこまでゆるめればかがんだときに見えるのかが知りたいだけだ。
ドラゴのためだ。
七斗はそう思いながら、また紐をほどいた。どのぐらいゆるめればいいのかわからないので、紐は持ったままだ。
「とりあえずかがんでみるから、見えたら教えて」
そのゆるさで縛り直せばいい。
七斗はゆっくりと前にかがむ。紐を持っていた手を前に出すと、エプロンの胸の部分がたわんできた。
「お、そこだ。縛れ」
龍和に指示されて、七斗は紐を縛った。
「手を前に出して、なんか洗ってるみたいにしろ」
龍和に言われたとおりにポーズを取る。もっとかがんでみたり、手を水道に伸ばしたり。
「よし、いいのが撮れた」
龍和が七斗にデジカメの画面を見せた。そこには、エプロンの横が弧になって、そこから乳首がのぞいている七斗の姿。自分でやっていてなんだけど、裸エプロンって、男でもなかなかにエロい。
恥ずかしい。
それが写真を見たときの最初の感情。だけど、それとは別にもうひとつ。
もっと撮ってほしい。
どうしてかわからないけど、そう思ってしまった。そして、その気持ちのほうが強いように思える。
「けど、これだけじゃ、まだ弱い。ちょっと手を入れるぞ」
「…え?」
どこに、手を入れるんだろう。
その疑問は、すぐに解決した。たわんだエプロンの間から、龍和の手が入ってくる。
「ちょ…」
七斗は体をよじった。そのせいで、龍和の指が、七斗の乳首に、ちょん、と当たる。
「ひゃっ…」
七斗は、おかしな声をあげてしまった。
「どうした」
龍和が、七斗の顔をのぞき込む。
「な、なんでもない」
七斗は首を振った。でも、なんでもなくない。龍和の指が触れた部分が、じん、としびれたみたいになる。いままで、乳首が気持ちいいなんて、思ったこともないのに。
まるで、龍和の小説みたいだ。
「そうか」
龍和は、それ以上、追及せずに、手を入れた写真を撮り始めた。かすかなシャッター音がするたびに、乳首の奥がうずく。 乳首が立ってないだろうか。
そのことが気になってしょうがない。
「ここまで楽に入るなら、いたずらもできるな。ところで、七斗。乳首、感じるのか」
七斗は目をぱちぱちとさせた。質問されている意味も、意図も、まったくわからない。
「さっき、あえいでただろ」
「あえいでないよっ!」
七斗は慌てて否定した。
「あと、写真撮ってるうちに、とがってきてたぞ。自分で触ってみろ。硬くなってる」
「そんなことないっ!」
「証拠、見せてやるよ」
龍和はデジカメを七斗の目の前に持ってくる。
見たくない。目をそらしたい。
…なのに、できない。

お取扱店