書籍情報

執恋(こい)、うらはら【特別版イラスト入り】

執恋(こい)、うらはら【特別版イラスト入り】

著者:妃川 螢

イラスト:緒田涼歌

発売年月日:2014年12月05日

定価:918円(本体850円+税)

――私のすべては、貴方のために ――この執恋(こい)は甘美なまでに、狂おしい 由緒正しきイギリス名家の血筋と、類稀なる美貌を誇る青年貴族・カイル。傲慢なまでに気高い彼がこの世でたったひとつ、思い通りにならないもの――それは、従兄弟であるグランデール伯爵の執事、天羽(あもう)の存在だった。幼いころ出会った日から、一途に天羽を慕うカイルの強い執着とはうらはら、冷然な彼と身体だけの関係が続いていた。そんなある日、2人の関係を覆す大事件がおこり…!?

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登場人物

天羽秀統(あもう ひでと)
常に冷静沈着な、グランデール伯爵家の執事。ブルネットの髪にアメジストの瞳。幼馴染みで当主である耀一郎に忠誠を誓う。カイルを諌めるために「おしおき」と称し彼を抱く天羽お真意とは
カイル・ローウェル
サファイア色の瞳と、濃い蜂蜜色の金髪を持つ青年貴族。耀一郎の従兄弟。勝気で我儘な半面、幼いころから天羽を一途に求める純情なところがある。趣味は凪をかわいがること。

立ち読み

「何をお考えです?上の空とは感心しませんね」
「違……っ、やぁ……っ!」
ぐりっと、繋がった場所を深く穿たれて、悲鳴にも似た嬌声が迸る。
凪のアトリエから引き摺られて、連れ込まれたのは城の一角にある天羽の自室。常にラルフとともにある天羽には、グランデール家の所有する屋敷や別荘のいずれにも、かならず自室が設けられている。
仕える者のために設えられたものとはとても思えぬ部屋のつくりは、主従の強い繋がりを感じさせ、カイルにとっては決して居心地のいい場所ではない。
それでも、天蓋つきの広いベッドに放り出され、押さえ込まれれば、身体から力が抜けてしまう。どんなに理不尽な行為も、天羽の熱を感じられることに違いはない。
――くそっ。
毒づいても、欲しかったものがやっと与えられた悦びに肌が震えるのを、止めることなどできない。
「苦…し、も…っと、丁重…に、扱え……っ!」
自分をなんだと思っているのか。
主の血縁者だ。
仕える立場にある天羽にとっては、敬意を払わなければならない存在のはずだ。
――もっとやさしくしろよ……っ。
毒づく心の声を、素直に口にすればいいのかもしれないが、何を言っているのかと、笑われるのがおちだ。
「これはお仕置きなのですから、やさしくしては意味がないでしょう?」
案の定、天羽の口からは、カイルを気遣うどころか、突き放す言葉が紡がれる。天羽にとってこの行為は、主の幸せを邪魔する者への、報復でしかない。
聞き分けのないカイルを窘めるために、天羽は無体を強いる。肌を合わせる理由としてはサイテーだが、ふたりの関係は最初からこんなだった。今となってはもう、“お仕置き”という理由抜きに、行為に持ち込むこともできない状況になっているほど。
いつからこんなふうになってしまったのだろう。
自分たちの関係は、どこで間違ってしまったのだろう。
けれどそんな焦燥を感じているのはカイルだけで、天羽の顔には憂いのカケラも窺えない。
「何度同じことを申し上げてもおわかりいただけなくて、私は哀しいですよ」
口許に不敵な笑みを浮かべながら、言うセリフではない。
「そ…な、こと、思…っても、ない…くせ、にっ、……あぁっ!」
ぎゅっと胸の突起を抓られて、悲痛な声が迸る。
「本当に学習能力のない」
嘆かわしい…と呟いて、組み敷いた白い身体に掌を這わせてくる。
自分の襟元を飾っていたリボンタイで両手首をまとめて縛り上げられ、はだけられたシルクのシャツ一枚がかろうじて肩に引っかかっているだけの恰好で、男の視界に痴態を晒すこの屈辱。
じっと注がれる冷めた眼差しが、カイルの羞恥を煽り、同時に恥辱に震えているはずの肉体に甘い疼きをもたらす。
「外…せ、よっ」
腕の拘束を解けと命じる。
「ご冗談を」
嘲笑とともに受け流されて、かわりに浅ましい蜜を滴らせる欲望の先端に爪を立てられた。
「ひ……っ」
浅く埋め込まれた剛直が、カイルの内部をジクジクと苛む。お仕置きだという言葉通り、意地悪く突き上げてははぐらかし、決定的な快楽を与えられないまま、すでにどれほどの時間が過ぎたのか。
白い肌は情欲に染まり、細い腰は抗い難い快楽に揺れている。天羽自身を埋め込まれた場所は熱く蕩けて、切なく男を包み込む。自分はままならない欲情に身悶えているというのに、責める男は涼しい顔で、口許に余裕の笑みを刻んでいる。せめて、欲望に溺れるそぶりでも見せてくれれば、どんな酷い仕打ちも繋がった場所の熱さの前に甘い陶酔へと姿を変えるのに。
「秀…統……っ」
掠れた声で呼んでも、男は眉ひとつ動かさない。

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